ビーズドール 朧月夜


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正面から

朧月夜:照るでもなく曇るでもない、春の夜の朧月夜に勝るものはない…


横から

朧月夜:わたくしは曇ることはしたくないのです。
さりとて今の世を照るように生きることは、
帝の寵愛を受けることと決めつけられるというのは…


後ろから

朧月夜:帝がわたくしに「来い」と?
…わかりました…すぐに…まいります。





本日(2012年9月30日)は中秋の名月です。
というわけで(?)今回は朧月夜です。
朧月夜といえば本来は春でしょうけど、更新の都合上春まで待てません(笑)

朧月夜といえば右大臣の娘にして、
アノ、弘徽殿の女御の妹ですね。
本来なら女御として朱雀帝のもとに入内するはずだった彼女ですが、
源氏の君と出会ってしまったばっかりにそれは叶わず
御匣殿(みくしげどの)の別当(長官)を経て、
内侍司の長官である尚侍(ないしのかみ)として御所に上がることになってしまいました。
尚侍は更衣よりさらに下がり、もはや妃の位ですらありませんが、
帝のそばに仕えるために実質的には妃のような立場です。
実際、朧月夜は朱雀帝の寵愛を一身に集め、それを上回る有力な女御もいなかったために
(朱雀帝自身が弘徽殿の子(=右大臣の孫)ですし
朧月夜の出仕と寵愛によって後宮は右大臣一派に握られた形になっています)、
中宮に立つ姫君はついに現れませんでした。

☆弘徽殿の女御や、後宮と政治権力の関係については以前こちらで書いたので省略します!

さて朧月夜に対抗できた可能性のある姫君は、この時代ただ一人でした。
左大臣の娘・葵の上です。
ですがこの葵の上は源氏の正妻となってしまったので、
有力な女御として朧月夜の対抗馬となることもありませんでした。

朧月夜とこの葵の上は、まさにそれぞれの父の役職名のように
右と左ほど違う人物として人生も性格も描かれていきます。
例えば…
・奔放な朧月夜⇔家柄に縛りあげられる葵
・帝に仕える朧月夜⇔帝に仕えたかった葵
・源氏を愛する朧月夜⇔源氏を嫌う葵
・欲しいものを手にする朧月夜⇔欲しいものは得られない葵
(これは源氏と葵の共通点です。なんだかんだいって似た者同士なところがあると思います)
・出家する朧月夜(とりあえず天寿はまっとうした?)⇔病死する葵
…こんなところでしょうか。
えっ、葵は本当は源氏が好きなのに素直にそれを言えなかった、ですって?
あれはですね…一種の独自設定なんですよね、「あさきゆめみし」の。
ああでも描かないとあまりにひどい姫君になってしまうと、先生は考えられたんでしょう…
別に脚色しなくても、そうひどくはないと私は思うんですけどね。
脚色なしで読んでいくと…
葵の心の中は弘徽殿の出世欲と並ぶほどの、どす黒くえげつない思いで満たされてしまっています。
生まれた家にふさわしい生き方をしなければと、自分を縛りつけて生きているからです。
それゆえに葵は、帝になれない源氏との結婚を強要された我が身を嘆いているのです。
自分を取り巻く状況のために望みを捨てさせられ、自分を殺して生きなければならない悲しみは
現代でも十分に共感を得られるものでしょう。
でもその望み自体が、知らず知らずのうちに周りに刷り込まれたものなんですよね。
気の毒ですね。不幸になるために生きたような人生です。
かといって出家などしてその人生に打ち勝つ気概も持てずじまいです。
そういう人柄にならないように育てられたわけでもありますが…
しまいには好きでもない源氏の子を生むはめになり、人生への絶望は頂点に達します。
そのようにすっかり精神的に弱り切ったところに、ちょうど良く六条の御息所の生霊がやってきたので、
いっそのことと自らすすんで命を引き渡してしまったような格好です
(そうでもなければ六条は葵の体に乗り移れませんよ、たぶん)。

いけない、いけない。朧月夜のページなのについ葵の話ばかりしてしまいました。
えっと…いろいろとごにょごにょ書きましたが(汗)、
朧月夜のイメージは一言で言うと「小悪魔」だと思います。
源氏の君と朱雀帝の間を行ったり来たりですからね。
小悪魔なら、色で例えるとピンク!と真っ先に思いつきましたが
それは女子の中二病色だと考え直しました(笑)
某ブランド・穴水ですね(湯桶(ゆトウ)読みしてください)。
(思いません?ねえ?…そう思うのは管理人だけでしょうか?)
考え直した結果、「派手で、なおかつロマンチックな感じ」を目指すことにし
(朧月夜のキャラはそういう風に取れますよね?)、
「ハワイの夕暮れ時の写真」をテーマにしました!
以前同じく夕方をテーマに秋好中宮を作りましたが、今回、物悲しさは一切排除しました。
物悲しさとは縁のない人物ですからね。
最後は出家の道を選ぶので、やはり胸の内には何かあったのかもしれませんが、
そこは夕暮れという時間帯からイメージを適宜補ってください…(酷)
また朧月夜の初登場シーンは、歌いながらふらっと歩いて来て…というようなものですが
あえて座り姿にしました。
理由はというと、今まで唐衣裳装束(女房装束または十二単とも呼ばれますね)での
座り姿を作ったことがなかったからです。
そもそも久しぶりにこの装束を作りたくなったので(桐壺の更衣以来です)、
わざわざ宮仕えをする登場人物の中から題材の人物を選んだ、というのは裏事情です(笑)
源氏に直接かかわる主要人物を題材にするというのも(実は)前から決めていたので
いろいろ考えた結果、朧月夜を作ったのでした。

あれれ…なんだか書いた言葉にとげが見え隠れしてます…!?
これでは管理人が朧月夜をどう思っているのか、ばれる…かも。
朧月夜ファンの人はゴメンナサイ
おまけで書いた葵についても、字数が多すぎるせいで却って
思い入れのほどが透けて見えてしまいそうですね。
…ええ、そうです。
管理人にとって、現在この2人は苦手な登場人物ランキングの上位に入っているのです…
極端すぎて、どちらも好きにはなれませんよ…

朧月夜の出家の理由については、いつかきちんと書きたいですね。
今はまだ用意がなくて書けません。
朧月夜の出家を、物語の中での役目を終えたので作者紫式部によって切られた、とするのは簡単ですけど
そういうことにして何も考えないのでは、読者の仕事を投げたも同然なので(笑)
そうでない理由を探したいと思います。

ですが葵が弘徽殿の妹として右大臣の家に、また朧月夜が左大臣の家に生まれていれば、
どちらももう少し幸せになれたかもしれませんね。


材料と図案はこちらで紹介します。


2012年9月30日公開



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